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2022年2月5日土曜日

ポリヴェーガル理論について

 ポリヴェーガル理論って?

今、ヨガを学ぶ人の間で大注目の理論、
神経科学博士ステファン・ポージェス博士が提唱したポリヴェーガル理論を、

わかりやすく説明します。


いままでは自律神経は2種類(交感神経と副交感神経)と言われていたのですが、
ポージェス博士は以下のことを発見しました。



①副交感神経が2種類あることを発見。(腹側迷走神経と背側迷走神経)

背側神経は進化のごく初期段階(原始的な脊柱類、爬虫類、両生類)
で発達した神経で、絶体絶命の状況下で生命維持をするための究極の省エネモード。
体も心もフリーズ状態になる。

腹側神経は進化の最後の過程(哺乳類)で発達した神経で、
人の表情や声のトーンを読んで、安全で安心だと感じられた時に活性化し、
人との健やかでくつろぎをもたらす、心地よく安らかな繋がりを築く。

ポージェス博士は「ポリヴェーガル理論」とは
「人が社会的スピーシーズ(種)として進化した軌跡を物語るもの」
だと言っています。

交感神経と副交感神経

従来の考え方では自律神経は、

交感神経(ストレス系、緊張系)副交感神経(癒し系、まったり系)
二つに大別され、人は毎日、緊張とまったりの間をシーソーのようにバランスを
取りながら生活していると説明されてきました。

交感神経(闘争か逃走か/Fight or Flight)

太古の昔、私たちの祖先が、まだ狩をしたり木の実を食べながら暮らし、
野生動物に襲われることが日常茶飯事だった頃、
危険をすばやく察知し身を守るか、戦うか、逃げるかという命を守るための
行動を無意識に迅速にとるために必要不可欠なものでした。

現代社会では、狼やトラに襲われるような環境にはないですが、
初デートや大勢の人の前でのスピーチで緊張したり、
怖い上司の前でストレスを感じたり、激しい運動をしたり、
何か気合を入れてやっている時、鼓動や呼吸が速くなり、汗が出たり
するのは、
交感神経がオンになっているということです。

常にストレス状態にある場合、
つまり交感神経のスイッチが入りっぱなしだと、人は燃え尽きてしまいます。

自律神経失調症も、この交感神経と副交感神経のオンとオフのバランスが、
うまく取れなくなった状態です。

副交感神経(休息と消化/Rest &Digest)

反対に安全、安心な環境で、のんびり、まったり、癒される~と感じたり、
人間関係においても一緒にいて安心するなー、ほっとするなーと感じたりしている時は、副交感神経が優位になっている状態です。
副交感神経は鎮静、消化吸収、生殖、睡眠、など、
休息や回復と関わる神経ネットワークです。
ですので、副交感神経が、ちゃんと働いてくれていないと眠れなくなったり、
過剰にお腹をくだしたりします。
ここまでは従来の自律神経でわかっていたことです。

ポリヴェーガル理論

ポージェス博士は、副交感神経である迷走神経には
腹側迷走神経背側迷走神経二つの枝があること、
そして、この二種類は進化のまったく違う段階で出現したこと、
そしてまったく違う役割を担っているということを発見し、
ポリヴェーガル理論と名付けました。


Polyvegalのポリは英語で複数という意味。
ヴェーガルはヴェーガス、さまようという意味で、
放浪者のことを英語でVagabondと言いますが同じ語源です。

神経が、あちこちに迷走するように走っていることから来ています。
つまり複数迷走神経理論ということです。
(多重迷走神経と訳している本もあるようです。)










腹側(ふくそく)迷走神経

腹側迷走神経は、人間が進化の過程で獲得した最も新しい神経系で、
横隔膜から上に位置し、表情や声をコントロールする筋肉、耳、心臓、肺などに
つながっており、自らの、そして他の人の顔の表情、声のトーンを感受し、その感受した情報が自分にとって「安全」であれば、その情報を脳に伝え、副交感神経が優位となり心拍数を下げ、呼吸は穏やかになり、人との絆を育み、良好な人間関係を構築します。

腹側迷走神経は、良好な人と人とのつながり社会とのつながりを司る神経ということで、教授は社会交流神経系(Social Engagement Neuro Platform)と名づけました。

背側(はいそく)迷走神経

一方、背側迷走神経は、胃や腸につながっていますが、
生き残りをかけて進化した「闘争か逃走か」の交感神経より、さらに進化を遡った
ごく初期段階に発達した神経で、戦うことも逃げることもできない絶体絶命の状態に置かれた時に、生命維持のために、エネルギーの消費を最小限に抑えるために、
ひたすら動かずにじっとしているための神経です。
気絶したり、死んだふりをしたり、心身ともに停止状態になります。


私たちは、人間関係において常に、

触手のように感覚神経を働かせて、人の表情や声のトーンを読んだりして、
いわゆる空気を読んでいます
(特にハグやキスの習慣がない日本人は、
 この機能が社会生活を営む中で特に重要視されている気がします。)


そこから得た情報で、自律神経は三種類の信号を受け取り脳に伝え体の反応になります。

→安全、安心、腹側迷走神経(社会交流神経)副交感神経が優位になり鎮静、消化吸収、生殖、睡眠、休息や回復。アイコンタクト、顔の表情、声のトーンなどから安全を感知し良好な社会関係を構築。

→危険、交感神経が優位になり身構える。
緊張、闘争か逃走か。 

→命の危機、背側迷走神経:副交感神経が優位になりフリーズして動けなくなったり、気絶したり、茫然自失状態になったり、絶望感、無力感から鬱状態になったり、心理的に解離したりします。



その人と一緒にいて安らげるか?

ボージェス博士は自身の子供たちへの恋愛関係のアドバイスで
「Do you feel comfortable with that person?
(その人と一緒にいて、くつろげる/安らげる?)」と聞くそうです。

それは健全な人間関係、絆を築くには、
「安全」と感じることが何よりも大切だからだと言っています。
ポージェス博士は「体が常にストレスにさらされいる状態にある時、人は他人と交わることはできず、他人を助けることもできず、他人に助けてもらうこともできない」
と言っています。
人間関係で安全だと感じた場合は、
絆ホルモン、ラブホルモン、そっと抱きしめたいホルモンと言われている
オキシトシンも分泌されます。
もちろん男女の関係だけなく、親子関係、人間と動物の関係であっても同じです。

上記に進化の観点から少し解説を加えます。
生物にとって最も大切なことは生きることです。

つまり危険をいち早く察知する能力は生死を分けます。

脳において、その役割は「古い脳」とか「爬虫類の脳」と言われている
脳幹が担っています。本能の部分です。

ですので、この核の部分が安心、安全とグリーンの信号を出さないと、
人間関係を築く上で、次のステップの愛する愛されるという
感情や情動には行きつかないわけです。

ポージェス博士がヨガ押しの理由

ポリヴェーガル理論はヨガという古来の智慧を現代の神経科学で説明しただけです。

ヨガは身体的状態をコントロールする神経運動に属します。
つまりヨガをすることを通して自律神経に働きかけ、心を鎮めたり、
ヨガを道具として、からだをコントロールすることを学びます。

特に呼吸を大切にするヨガは、呼吸を通して自律神経をコントロールするツールです。」

顔や声をコントロールする筋肉と心臓と肺は腹側神経でつながっており、
 機能的に結びついている。ヨガは、筋肉やタッチ、声(チャンティング)、
 呼吸を使って、自律神経に働きかけ心拍を下げ、呼吸を穏やかにし、
 安心安全という状態を心身にもたらし、ひいては人と人とのつながりをもたらす』


また、ポージェス博士とIAYTの認定ヨガセラピストでもあるメリッサ・サリバン医師との共著の中では、ポリヴェーガル理論ヨガ哲学にある3つのグナの考え方は同じであると明言しています。